「2014年9月」のアーカイブ

9月20日(土)より開催する「美術する身体―ピカソ、マティス、ウォーホル」展について馬場館長が見どころをご紹介します!

 

 馬場駿吉館長.jpg

馬場駿吉館長

注目は、ピカソ晩年の傑作《サビニの女たちの略奪》が日本初公開!


本展は、美術家たちがどのように身体の存在に向き合って来たかを探るため、第二次世界大戦後の1940年代後半から現代に至るまでに制作された作品より、100点を選び構成しています。
版画作品を中心に油彩、素描、彫刻、写真、映像などが含まれ、近年の表現形式の多様化が読み取れると思います。
とくに今回注目されるのは、ピカソ晩年の傑作の一つ《サビニの女たちの略奪》(1963年)が日本初公開されること。21世紀もなお戦乱の絶えない世界情勢を眺めると、まずは身体の尊厳を守るべきだというピカソのメッセージが今なお有効である現実に心が痛みます。

フォートリエやデュビュッフェの版画作品のほか、マティスの素描、ジャコメッティの彫刻、ウォーホルの肖像プリントなど・・・・・私自身も楽しみにしています

 

私が美術の世界に入るきっかけとなったのは、版画を購入し手元の置いたことでした。今回は、様々な版画作品も数多く出展されています。ヘンリー・ムーアジャコメッティなど彫刻家として知られている作家たちのドローイングや版画も出展されていて、私自身もとても楽しみにしています。

また、身体の静止や運動のフォルムを軽やかに描いたマティスの素描、フォートリエやデュビュッフェの版画作品も見逃せません。
消費社会の中に漂う身体の寄る辺なさを象徴するウォーホルのマリリン・モンローなどの肖像プリントのほか、フォトリアリズムにおけるクロースの肖像写真を基本としつつ絵画化する行為に新しい意味を再認識させられる作品は、ポップ・アートが単なるうたかたの現象だけではないことを知る手がかりとなるでしょう。20世紀美術が身体の美の追求を全く忘れてはいなかったことを示す画家カッツやプライア、写真家のハーブ・リッツの作品も並びます。最後に光と影によって変幻する身体のイメージを捉える杉浦邦恵が芸術家 村上隆の姿を影絵化した写真作品も目を引きます。

古代から現代に至るまで芸術家たちにとって重要なテーマである〈身体〉


私たちの生命現象を包む身体のかたちの追究は、人類が芸術表現に目覚めた古代から多様な技法を駆使する現代に至るまで、脈々と受け継がれてきた重要なテーマです。美術史に照らしてみても、宗教、倫理、政治、環境の変化など、様々な因子によって身体への関心の度合いや表現方法には、多様な変遷が見られます。しかし、美術家はもとより、私たちは誰しもが、今もゴーギャンの「われわれは何者か」*という切実な問いを抱えながら人生を歩いています。そうした問題意識に最も近い〈身体〉というテーマは、近年いよいよその重要性を増してきているといえると思います。
*ポール・ゴーギャン《我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか》(1897-98年)。当館では、開館10周年記念「ゴーギャン展」で展示。

〈身体〉の追求が美術の王道であることが、本展を通して感じていただけると幸いです


最近の医学では、病気や事故で失った体を元に戻す再生医療という我々の身体を根底から覆すようなことが行われています。そのような技術の進歩はありながらも、母親の体内から受け継がれてきたかけがえのない身体の変わらぬ有難さ、大切さ、尊さというものを、美術を通じて感じることができるのではないでしょうか。 

そして、本展を通して、芸術家たちにとって〈身体〉の追求が美術の王道であることを示す一助となればと願っております。