永遠(とわ)に花咲く庭:見どころ

1.17世紀フランスの植物画にみる二つの傾向

写真:さまざまな花の写生集

(2) 『さまざまな花の写生集』
ジャン=バティスト・モノワイエ 1660-80年 エッチング
Maria Antoinette Evans Fund  30.1331.8
17世紀のフランスでは、植物画において科学的傾向と装飾的傾向の二つが発展しました。どちらも17世紀の初め、王立植物園の造園にともない、百科全書的な植物園を求める新しい流れから生まれたものでした。科学的傾向によって植物は可能な限り正確に描き出された一方、装飾的傾向はフランスの装飾芸術の普及を促しました。この時代、自由で繊細な表現を可能とするエッチングは、咲き誇る豪華な花束の素描を複製する際に好まれた技法でした。(作品(2))

2.18世紀:芸術と科学の結合

写真:スリナム産昆虫変態図譜

(3) 『スリナム産昆虫変態図譜』
マリア・シビラ・メリアン 1705年 エングレーヴィング
Bequest of George P. Dike - Elita R. Dike
Collection 69.243

写真:植物図選

(4) 『植物図選』
クリストフ・ヤーコプ・トルー 1750-73年 エングレーヴィング
Bequest of George P. Dike - Elita R. Dike
Collection 69.186

植物学は17世紀末から18世紀初めにかけて急速に発展し、ロンドンとニュルンベルクが植物学の活動の中心地となりました。植民地化によって世界各地から多様な植物がヨーロッパ大陸にもたらされると、植物学は流行の学問となり、18世紀半ばには、リンネによって植物の分類体系が整えられました。植物画では植物の全体から花自体に目が向けられ、芸術的かつ科学的な植物画が生みだされました。(作品(3)、(4))

 

3.フランスにおける新たな発展

18世紀末にフランスの植物画は科学的伝統と装飾的伝統が結合し、19世紀のフランスは植物画制作の最前線となりました。しかし装飾的な花の絵画は依然として人気があり、装飾産業におけるモティーフとして好んで使われました。そのため花をより美しく現実的に再現するような版画技法が用いられ発展しました。(作品(5))

写真:中国・ヨーロッパ美花精選図集

(5) 『中国・ヨーロッパ美花精選図集』
ピエール=ジョゼフ・ビュショー 1776年 エッチング
Bequest of George P. Dike - Elita R. Dike
Collection 69.106

4.ルドゥーテとソーントンの時代:19世紀のフランスとイギリス

写真:フローラの神殿

(6) 『フローラの神殿』 ロバート・ジョン・ソーントン
1799年 エングレーヴィング
Bequest of George P. Dike - Elita R. Dike
Collection 69.314
19世紀フランスでは、ナポレオン皇后ジョゼフィーヌに重用された植物画家ルドゥーテによって、美しくかつ科学的に正確な植物画が制作されました。またイギリスでは、植物学者で園芸家のウィリアム・カーティスが科学的な情報を掲載した「ボタニカル・マガジン」を出版し、植物画を大衆へと普及させます。一方ロバート・ジョン・ソーントンは、様々な製版技法を駆使して芸術的に優れた『フローラの神殿』を出版しました。この時代、フランスとイギリスでは、植物学と芸術という異なる立場の植物画が生み出されました。(作品(6))

5.焦点の変化:庭園全体からひとつひとつの種へ

写真:バラ図譜

(7) 『バラ図譜』 ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ
1817年 エングレーヴィング
Bequest of George P. Dike - Elita R. Dike
Collection 69.286

写真:ツバキ属誌

(8) 『ツバキ属誌』
サミュエル・カーティス 1819年 エッチング
Bequest of Katharine Lane Weems
1989.656a

植物画は、次第にバラやツバキといった単一の属を選んで描かれるようになります。数あるバラの本のうち、ルドゥーテの『バラ図譜』は、図版の技術的完成度と繊細な色彩において、あらゆる植物画のなかで最も美しいものといえます。またツバキは、18世紀の初めに日本からヨーロッパに紹介されて以来人気となり、多くの植物画に取り上げられました。(作品(7)、(8))

 

6.石版刷り技法(リトグラフ)

1854年にボストンで出版された『オオオニバス』には、開花の過程が6点の図版で描写されています。ここに、特定の植物に特化された植物画の最終段階を見ることができます。またこの作品には、多色石版刷という19世紀初めの最も重要で新しい版画技法が用いられています。石版刷りは、画家の構想が直接作品に反映され、制作過程が容易で経済的であることから、広く普及しました。(作品(9))

写真:オオオニバス:アメリカの巨大スイレン

(9) 『オオオニバス:アメリカの巨大スイレン』
ヨハン・フィスク・アレン 1854年 リトグラフ
Gift of Charles D. Childs 48.60 Collection 69.106

エピローグ:時代の終焉

1839年に写真が発明されると、伝統的な植物画に終止符が打たれ、紙にインクで描かれた美しい植物画の時代は終わりを告げました。しかし、趣味としての要素が加わった植物画は、植物を愛する人々の中で今も色あせることなく描かれ続けています。

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