ダインは時と共に作品の主題や表現方法を自在に変えてきました。さて、何を描いてきたのでしょう?ダイン入門のために、ダインを知るためのキーワードを紹介します。作品を通してダインの好きなもの・関心の深いものが見えてきます。展示室では想像力を目いっぱい膨らませてください!

ジム・ダイン入門

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  • 初期の作品
  • 道具
  • ローブ
  • 自画像
  • 人物画
  • ハート
  • 草花、樹木
  • ヴィーナス
  • 近年の作品
I. 初期の作品
  • 《カー・クラッシュI》
    1960年 76.2×55.9cm
    リトグラフ
  • 《シンシナティII》
    1960年 71.1×102.9cm
    リトグラフ
  • 《ピカビアIII(うめき声)》
    1971年 138.1×90.2cm
    ハーフトーンの紙面にリトグラフ、コラージュ
初期作品について
ダインが版画家として正式にスタートしたのは、リトグラフによる連作《カー・クラッシュII》を発表した1960年(当時25歳)。ダインは、オハイオ大学で版画制作を学び、ここでリトグラフや木版画、エッチングに挑戦。そして短期間でしたが、ボストン美術館芸術大学(SMFA)にも通っています。
初期作品には、単語や言葉に対する遊び心が溢れた作品や、コラージュ、シルクスクリーンなどの実験的な作品のほか、ポスターも多数デザインしました。

© Jim Dine. Courtesy, Museum of Fine Arts, Boston.

II. 道具
  • 《5本の刷毛(第5ステート)》
    1973年 69.9×100.3cm
    エッチング、ドライポイント、ソフトグランド
  • 《風景の中の大きく赤いトレンチ》
    1973年 76.2×55.9cm
    カラー・リトグラフ
主題について
ダインは、金づち、ネクタイ、刷毛など身近な物を好んで描いています。幼いころから祖父と父親が営んでいた金物店の作業場にあった工具類に魅力を感じていました。
ダインは、ハートやバスローブ、道具、刷毛などを、自分の人生と共鳴するモチーフとして繰り返し追求しています。
これらのテーマは擬人化され、工具が髪の毛をはやしたり、刷毛が髭を伸ばしたり、ダイン本人の代役を務めています。

© Jim Dine. Courtesy, Museum of Fine Arts, Boston.

III. ローブ
  • 《赤いバスローブ》
    1969年 135×96.5cm
    カラー・リトグラフ
  • 《自画像:風景》
    1969年 135×95.6cm
    カラー・リトグラフ
  • 《木版刷りのバスローブ》
    1975年 91.4×61cm
    12個に切り分けた版木による木版とリトグラフ

© Jim Dine. Courtesy, Museum of Fine Arts, Boston.

IV. 自画像
  • 《スキー帽を被った自画像(彩色) 第1ステート》
    1974年 66×50.8cm
    エッチング、油絵具による加筆
  • 《JD紙の上の自画像》
    1978年 66×50.8cm
    エッチング、ソフトグランド、アクアチント、ドライポイント、電動工具
    (作者のイニシャルの透かしが入った手漉き紙にプリント)

© Jim Dine. Courtesy, Museum of Fine Arts, Boston.

V. 人物画
  • 《屋外にいる7月のナンシーⅠ》
    1978年 90.5×63.2cm
    エッチング、ソフトグランド、アクアチント、緑、ピンク、黒で刷り、ピンクと青の水彩絵具による加筆
  • 《屋外にいる7月のナンシーⅣ》
    1978年 105.4×75.9cm
    3枚の版を用いたエッチング、ソフトグランド、アクアチント、ドライポイント、電動工具、刷りの間にオレンジとピンクの油絵具による加筆
  • 《屋外にいる7月のナンシーⅥ:聖地の花々》
    1979年 90.8×63.2cm
    エッチング、ソフトグランド、ドライポイント、電動工具、重ね刷り、刷りの間にエナメルによる加筆
  • 《屋外にいる7月のナンシーⅨ:3月のパリ(チューリップ)》
    1980年 75.6×56.5cm
    エッチング、ソフトグランド、ドライポイント、エングレーヴィング、アクアチント、電動工具、重ね刷り、刷りの間にピンク、青、緑を加筆
版の変容について
制作過程の証を残すこと好むダインにとって、版画制作は発想を進化させていくさまを記録するための理想的な手段でした。ダインは、心赴くままにプリントと手彩色を組み合わせたり、一つの媒体に別のものを重ねて刷ったりして、従来にはない方法で様々に組み合わせ、独創的な手法を用いて制作しました。

レンブラントの版画展には何度も行ったよ。ステートを見るとワクワクする。たとえばピカソの「牛」だ。それを見た時には文字通り気絶しそうになった。

© Jim Dine. Courtesy, Museum of Fine Arts, Boston.

VI. ハート
  • 《6つのハート》
    1970年 76.2×55.9cm
    カラー・リトグラフ、スプレー・ペイント、テンペラで加筆、コラージュ
  • 《湖へ》
    1998年 120.7×96.8cm
    木版
  • 《海の中の自分》
    1991年 132.4×100.6cm
    ソフトグランド、アクアチント、スピットバイト、赤と黒による刷り、アクリル絵具で加筆

ダイン作品の中でも《ハート》は、日本でも人気が高い作品です。ハートの模様は、バレンタインのカードに使われるなど、今や愛の代名詞となっています。陽気なハート、エロティックなハート、そして目がついたハート。様々に図案化されたハートは、ダイン本人の心情や意図の変遷にともなってその意味が進化、変容しています。

壁一面の彼のハート作品を見た息子が言ったんだ。「うちのパパは恋をしているんだ」と。言えてるよ。私は恋してるんだ。芸術を作りだすこと、ひたすら作業することにね。

《赤い暗闇》
1993年 139.7×108.6cm
木版、赤色のエナメルとラテックスによる加筆

© Jim Dine. Courtesy, Museum of Fine Arts, Boston.

VII. 草花、樹木
  • 《マンドレイク》
    2000年 80.6×66cm
    エッチング、ソフトグランド、アクリル・ウォッシュと木炭による加筆
  • 《ラヴェンダー色の帯》
    1999年 101.6×76.2cm
    スクリーンプリント、フォトグラヴェール、エッチング、電動工具、アクリル絵具による加筆
  • 《黒と白の実り》
    1986年 157.5×99.1cm
    エッチング、エングレーヴィング、スピットバイト、アクアチント、電動工具
版・素材(紙)について
木版、エッチング、リトグラフの版画作品を制作するダインですが、様々な技法を組み合わせて実験的な作品も多数生みだしています。鉢植えの観葉植物を、同じエッチングプレートを用いて6枚のヴァリエーションで刷ったり、エッチングと木版の組み合わせや、リトグラフとインクジェット印刷の組み合わせなどにも取り組んでいます。
紙も彼にとっては、イメージの源となり作品に欠かせない要素です。日本の和紙を高く評価し、木版との相性の良さから好んで使用しています。

© Jim Dine. Courtesy, Museum of Fine Arts, Boston.

VIII. ヴィーナス
  • 《9つの冬の眺め(1)》
    1985年 133.4×94cm
    白いラテックスで花柄をローラーで塗った上に、切り分けた版木を使った木版、油絵具による加筆
  • 《9つの冬の眺め(8)》
    1985年 133.4×94cm
    大河原紙に木版、アクリル絵具による加筆
  • 《ウィーンの燃える女性》
    1993年 141.6×104.1cm
    2枚の版によるエッチング、刷りの間に艶出しニスと赤いエナメルによる加筆、刷りの後に木炭による加筆
  • 《夜空の中のふたつのヴィーナス》
    1984年 105.4×76.8cm
    スクリーンプリント、リトグラフ

© Jim Dine. Courtesy, Museum of Fine Arts, Boston.

IX. 近年の作品
  • 《さらに武術的な動き》
    2010年 91.4×132.1cm(2枚)
    2枚の紙にリトグラフ、アクリル絵具による加筆
  • 《台所のフクロウ》
    1996年 90.2×70.5cm
    市販の壁紙にウォータレス・リトグラフ
近年の作品について
1990年以降、ダインのテーマには鳥(フクロウ、カラス)、そして今ダインの心を支配して離れない「ピノキオ」が現れます。フクロウは叡智をつかさどるギリシャの女神として彼自身にもなぞらえ、カラスは子ども時代の思い出に関わる存在だとしています。そしてダインの独特なピノキオは、幼少時にディズニー映画を見た時の記念の人形によって形作られたものであり、非常に個人的な視覚イメージです。

© Jim Dine. Courtesy, Museum of Fine Arts, Boston.

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